予防歯科について考える前にまず予防歯科で守るべき歯1本1本の価値について考えてみましょう。
私たちが普段食事をするのに何気なく使っている歯はいったいどのくらいの価値があるのでしょうか。
歯は痛みがあれば治療してもらって何かつめる、それでも治らなければまあ1本ぐらい抜歯しても、と考えている方もいるかもしれません。
歯は削ったり、抜いたりしても仕方ない、消耗品なのでしょうか?
たしかに削った部分の歯は人工的な材料で補填し、歯を失った部分に関しては入れ歯やブリッジ、インプラントを入れれば噛めるようにはなるかもしれません。
しかし、失った歯そのものはもう二度と戻ってこないのです。
また、最近の研究では、咀嚼した時に自分の歯から伝わる刺激が脳を活性化することがわかっており、歯が残っている人とそうでない人とでは認知症になる確率にも違いが見られるということもわかってきています。
歯が1本でも多く健全に残っていることは非常に価値があることなのです。
日本では平成14年5月27日の東京地裁の判決で、歯1本に対して150万円の価値があると判断しました。
“歯1本 150万円” です。(大人の歯合計28本で総額4200万円)
一方、歯の治療費が高額なアメリカで歯の資産価値についてアンケート調査を行い、「あなたの1本の歯の値段はいくらですか?」と尋ねたところ、一番多かった回答が日本円に換算して1本500万円、中には1本数千万の回答もあったそうです。全体で総額1億4000万円の価値ということになります。
治療の面から考えても歯を1本失ってインプラントやセラミックのブリッジで治療すると40~50万円の費用がかかる上、治療に通う肉体的、精神的負担も含めて考えると、歯1本につき150万円の価値は充分あると思って間違いないのではないのでしょうか。
これはあくまで一つの物差しですが、歯は全身の健康を支える大切な身体の一部分であり大切にしなければいけないのは言うまでもありません。ほっておくと気づかないうちに虫歯や歯周病に侵され、治療が必要になったり、最悪の場合抜かなければなりません。
歯は削ったり失ったりしたら一生元に戻りません。
そうならないためにも、セルフケア(ご自身の日々のメインテナンス)とプロケア(再発防止を考えた治療と定期メインテナンス)の両方向から予防歯科に努めることが、ご自分の歯で長く健康的に過ごしていただくために重要なのです。
つまり、“痛くなった時や、何か困ったことがあった時だけ行く”というようなイメージがある歯科医院へは、そうでない健康な時から通うことにこそ真の意味があるのです。